2008.05.25

ブログ移転のお知らせ

                                                                                 
さいとうけいこ「猫マニアッ句」は新ブログに移転しました。


新装開店です。


新ブログのURLはこちら↓

http://nekomaniakku.blog61.fc2.com/

みにゃさまのご来店お待ちしておりまっす!
                                                                                                                                            

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2008.05.19

猫撫で草紙 その31(最終回)

<猫撫で草紙 最終回>


二人ともあまりにげんなりしているので、義父も義母も早く帰って猫見つけて来

なさいと言わんばかりに私たちを引き止めることはしなかった。

結局二泊しただけで帰路に就く。

Hパーキングエリアには午後二時半到着、早速たらの写真を見せてエリア内の

従業員に尋ねて廻る。インフォメーションセンターには相変わらず何の情報も

入っていなかった。私たちは既に顔を覚えられてしまって、

「まだ見つからないのかね?」

と心配してくれる従業員のおばさんもいた。

エリア内を聞きまわった後は田んぼの中に点在する十数件の民家を訪ね、これ

また顔を覚えられてしまった人たちに励まされながら聞き込みを続ける。

何軒目かに、パーキングエリア外側の道路から程近い、Wさん宅を伺った。

小学生の男の子に写真を見せると、彼は即座に「見た」と言った。

「迷子猫が昨日も来て、一昨日もお昼に来て、餌あげました」

「あそこの納屋から出て来て、ウチの猫と一緒に餌食べたんだよ」

「お昼だったら絶対来るよ、夜にも一回来たよ」

初めて情報らしい情報を掴んだ!

「それじゃあ後でまた来て、見張らせてもらってもいいかな?」

と彼に頼み、少し元気の出た私たちは未訪問の家の聞き込みを続けた。


二日前、携帯電話に「猫見ましたよ」という通報があった時、見つかる可能性が

0パーセントから50パーセントになった気がした。そして今、男の子の話を

聞き、私の中では50パーセントが100パーセントになった。

たらは絶対この近辺に居るのだ!


他の家の聞き込みを終えてWさん宅に戻ると、男の子のおじいさんとおばあさん

らしき二人が、車で出かけるところだった。

運転席から、おじいさんがにこにこしながら身を乗り出し、

「猫、来てますよ!」

と教えてくれたので、あわてて納屋に走る。

庭の真ん中に、確かに『お座り』をした猫が居た。

が、たらより小さい白猫だった。

「ちがう」

がっかりして後ろの夫をふり返った時、車から降りて来たおばあさんが、

「その猫はウチの猫、お宅の猫は納屋の中に居ますよ」

びっくりさせて逃げ出さないように、今度は慎重にそのバラック作りの納屋に近

付く。中をのぞくと、湿った古い木造の暗がりに、ああ、ウチの猫が居た……

たらは怯えている様子で、今にも逃げ出しそうだ。私との距離を一定に保って警

戒しながら、うろうろと右に左に動いている。

「たらちゃん、たらちゃ~ん」

「たらちゃんここにいたの~? 遅くなっちゃってごめんね~」

猫撫で声で呼びかける私の声をじっと聞いているが、なかなかこちらに近づいてく

れない。

横でおばあさんが、

「そうそう、たくさん話しかけてあげるといいですよ」

と言いながら、ビニール袋に入れたカリカリ餌を手に掬ってたらに見せた。

可哀そうに、お腹が空いていたのだろう。たらは餌につられて素直に近寄り、以前

何回も学習したタイミングで、私は猫を捕まえることができたのだった。

たらは腕の中でにゃおにゃお鳴いた。厭がらずに抱かれてくれた猫は、虚ろな目を

して何かを思い出そうとしている。

側溝にでも落ちたのだろうか、野良猫たちと喧嘩したのだろうか、首輪は外れてし

まって身体全体がくすんだ色をしている。

白い部分はねずみ色に、黒の部分は埃っぽくなっていた。

夫はすぐさまキャリーを取りに駐車場に走り、その間出会った従業員の人々に、

「見つかったんです!」

と興奮しながら伝えたので、それを聞いた五、六人が現場に駆けつけて来た。

「やっぱり猫のいる家に行くんだわー」

「良かった良かった、事故に遭わなくて何よりですねー」

「見つかるとは思ってなかったですよ、凄いですね、奇跡ですねー」

人々に見守られながら、次々に声をかけられながら、私はただひたすら猫を抱い

ていた。


蝉たちは尚も鳴き続けていた。いつまでも高らかに唄い続けていた。

そして私は猫を抱きながら、無数の蝉の鳴き声が聞こえてくる覚醒したこの現実

をしっかりと意識していた。
                                                                                                                                                         

                                   <猫撫で草紙 完> 
                                                                       

  
                                                                                                                                                    

‘奇跡の猫’たらちゃん
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2001年6月撮影
                                                                                                                                           


                                                                                                                                             
最後まで読んでいただきありがとうございました。

無事に見つかった‘たらちゃん’に一票!

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2008.05.13

猫撫で草紙 その30

<その30>


一時間が経ち二時間が経ち三時間が経つ。

走り抜けて行った植え込み地点に夫か私のどちらかが見張りをしていたが、猫は

一向に姿を見せなかった。

もわもわっとした暑さにもすっかり参ってしまい、ベンチに寝転んで、ただひたすら

待つことにする。

仰向けになって視界いっぱいに広がった空は、背の高い緑樹に囲まれて夏の光を

放ち、ふと気がつくと、一斉に蝉が鳴いているのだった。

昨日までの景色の見え方と今現在の景色の見え方が全然違う気がした。

一瞬にして猫を失った哀しみが全身に沁みて来る。

たみちゃんと別れて三日目の今日、たらまでいなくなってしまうなんて……
 
車に乗るのをあんなに厭がっていたのに、無理矢理連れて来てしまったのがいけ

ないのだ。胴輪のはめ方を動物病院で一応教わってはいたものの、ちゃんとテス

トしてみなかったのは迂闊だ。

暑さとショックで疲労もピークとなり、私は夫を責めずにはいられない。責め続ける

私に夫は何も応えなくなってしまった。


延々と続く蝉のお説教を聞きながら、五時間が経つ。雲行きが怪しくなり、蝉の

声は急にデクレッシェンドし、俄かに夕立になった。帰省を続行するつもりの夫に

楯突いて今日は自宅に戻りたいと言い張った。こんなにへろへろになっている

ところに、この重苦しい雰囲気の中で、あと三百キロ近くも走るのはこりごりだ。

明朝もう一度この場所に来て、ひととおり探してみてから実家に向かうという話

にまとまり、空のキャリーを車に乗せて、大雨の中をUターンした。


自宅に戻ってからすぐ、インターネットで検索し、『猫探します』の掲示板に書き

込みをする。写真を選んで、『猫探してます・情報をお寄せ下さい・保護してくだ

さった方には謝礼させていただきます』と書いたチラシを三十枚ほど作り、

カレンダーの紙の裏にも同様に書いたポスターを作った。

翌朝、再びHパーキングエリアに寄り、インフォメーションセンターにポスター

を貼らせてもらい、サイクリングセンターで自転車を借りて付近の民家を一軒

一軒廻る。猫を見なかったか尋ね、猫を見かけたら電話して下さいと頼み、

チラシを配り、電信柱にもポスターを貼り、再びインフォメーションセンターに

戻って「情報は一件も入っていない」と知らされてから帰省を続行した。

東北自動車道を北に進みNサービスエリアに寄った際、ベンチに座って、リード

で繋いだ仔猫を遊ばせている若い女性を見かける。

思わず、

「猫ちゃん大丈夫ですか? 車、厭がりませんか? 吐いたりしませんか? 

逃げちゃったら大変でしょ?」

と、立て続けに聞くと、

「もう一匹は置いて来たんだけれど、この子は目が悪くてとてもお留守番が

できないから連れてきたんです。もし逃げるようなことがあれば、こういう所

だと二度と戻っては来ないでしょうねえ」

と、落ち着いたもの言いの答が返って来た。

リードに繋ぐのは何となく可哀相だと思っていたのが間違いだったらしい。

ちゃんと無事に長距離をドライブしている猫もたくさんいるのだ。

その夜、何とか無事に夫の実家に辿り着き、猫の話をしながら夕飯の仕度を

手伝っていると、携帯電話が鳴った。チラシを見た女性からだった。

「昨日の夜七時頃、パーキングエリアのフェンスをくぐって行く、それらしい猫

を見かけました」

たったそれだけの話に胸の中を熱いものが込み上げて来た。

夜七時は私が決めたたらの夕食の時間だ。きっとお腹が空いたのだ。

何か食べるものはないかと探し廻っていたのだ。


たらがフェンスをくぐるそのうしろ姿、道路を渡り切って一メートルほど跳び上

がり、お尻を高く持ち上げながら上体を伸ばし、難なくするするするとくぐり抜

ける白黒模様の猫のその姿が、くっきりと目に映った。


聞き込みに使ったたらの写真
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君と居て六年経ちぬ八十八夜  2007年5月2日のマニアッ句です 


                                                        


<とうとう次回は最終回!どうぞお楽しみに!>

猫撫で草紙 その31 最終回へ

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2008.05.09

猫撫で草紙 その29

<その29>


たみちゃんが引っ越してしまった三日後、たらをキャリーに入れて車に乗せ、

東北自動車道を北に走り、夫の実家に向かう。何回か車に乗せて慣れさせては

みたものの、「いやだーいやだー」としか聞こえない妙に哀しそうな鳴き声は、

出発から延々と続く。夫の実家は猫など飼ったことはなく、猫トイレも猫ケージ

も、つまり猫用品すべて持参で、荷物を詰め込んだ車内の不快指数は増すば

かり。


一時間ほど走って、少し休憩しようとHパーキングエリアに寄る。

ちょうどお昼どきで、パーキングエリアは夏の行楽客と行楽客を運ぶ車両で溢れ

ていた。

こまめに休憩を取って、人間も猫も気分転換しながら行くしかないなあ、

それにしてもそんなにのんびりしていたら今日中に到着できるのかなあ、

などと案じながら缶ジュースを買い、車に戻る。と、猫に胴輪を装着して、植え込

みを散歩させているはずの夫が、その胴輪だけを両手にだらりと持ち、呆然と

立っていた。

「逃げられた……」

「胴輪なんてするっと抜けちゃって、凄い勢いで走って行った……」

その意味を把握した時の私の形相はどんなものだったろう? 

胴輪を装着されはしたものの、車から出た瞬間、猫はやっと厭な乗物から解放さ

れた。しかしそこは行楽客の群集や、リードで繋がれて散歩している犬たちや、

歓声を上げて走り回る子供たちで溢れる異様な音が集まった、車の中より恐ろし

い場所で、多分、猫は一瞬のうちにパニックに陥ったに違いない。

しかもここは、自宅の庭ではない。家から50キロメートルも離れた見ず知らず

の土地なのだ。20分ぐらいうろうろしたら帰ってくるだろう、という訳にはいかない

のだ。

とにかく私は走り抜けて行ったというその植え込みの辺りをくまなく探し始めた。

最初は小さい声で、

「たらー、たらちゃーん」

と呼びかけていたが、何処にも見つからず、何処から出てくる気配もなく、私の

声はどんどん大きくなって行く。最初のうちこそ気恥ずかしかったが、こういう

所に長居する人はいないのだからと開き直り、旅の恥も掻き捨て気分になり、

『犬か猫かに逃げられちゃって慌てふためいて探している』のを周囲にも一目瞭

然の、大声の捜索になっていった。犬は呼べば悦んで戻って来るだろうが、猫は

そういう動物ではない。そんな事分かってはいるが呼ばずにいられないし他に

なす術も無い。


そこは何本もの背の高い緑樹が木陰を作り、数個のベンチも設置されている

ちょっとした憩いの一角であり、中央には何故か埴輪の石像が置かれている。

草むらの奥は高さ2メートルのフェンスが張り巡らされ、フェンスの下1メートルに

一般道路が、道路の向こう側には民家が何軒か、そしてそのずっと向こうまで

田んぼが続いていた。

電話ボックスから出て来た夫に何処にかけたのか尋ねると、「保健所」と答えた。

ちょっと早すぎるような気もするが、既に私たちは完全にパニくっていたのだ。

インフォメーションセンターに行き、事情を話して情報を請うと、たまにそういう

ことがあってパーキングの中で交通事故に遭ってしまう犬や猫もいると聞き、

不安はますます募ってくる。


植え込みのある場所から一番はずれにあるサイクリングセンターの、店番のおば

さんにも尋ねた。

イカ焼きやたこ焼きや大判焼きを売っている屋台のおじさん、制服を着て働いて

いる清掃会社のおばさんたち、休憩中のウエイトレスさん、従業員としてサービス

エリアに居続ける人たち全部に聞いて廻る。

「どんな猫ですか?白黒のブチ?ああそれなら大丈夫ですよ。シャムとかペルシャ

とか血統書付きの猫だとさらわれちゃう恐れもあるけれどねえ」

と、微妙な気休めを言ってくれるおばさんもいれば、

「猫がいなくなっちゃって探してるんですが」

と話しかけただけで、「俺には関係ないから」というように片手を横に振り、

そっぽを向いてしまうおじさんもいた。

                                                                       

<つづく>

猫撫で草紙 その30へ
                                                                             


果たしてたらちゃんは無事に見つかるのか?
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次回をどうぞお楽しみに!                            


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2008.05.05

猫撫で草紙 その28

<その28>

七月に入り、酷暑の日が続いた。

夏休みに帰省する折、’たら’を連れて行こうと夫が言い出し、「まずは車に慣れ

させなくては」と、買い物やちょっとした車での移動時には猫同伴となる。

が、相変わらず、猫の方は大いに厭がっていた。

手術の傷跡も癒え、投薬も終わり、たみちゃんの入室も解禁になる。

夕食後、遊びに来たたみちゃんは、たらの定位置となってしまったかっての自分

の定位置に当然のように陣取り、うたた寝をした。そういう時、たらはソファーの下

で『お座り』をして、たみちゃんを必死で見張るのだった。

その年の梅雨は雨が少なかった。もわっとした暑さに耐えているうちに、何時の

間にか梅雨明け宣言が出されていた。

やっと入室を解禁されて、リビングがエアコンの冷房で快適なのを知ると、再び

たみちゃんは日差しの強い外よりも家の中で寛ぎたくなったらしい。

もしかしたらたみちゃんとももうすぐお別れなのかもしれないね、、、

涼しいお部屋でゆっくりしておいで…… 

そんな気分でひょいひょいと猫を招き入れる。

たらもひとりで居るより、お姉さんにリードされてあれこれいたずらするのが楽し

そうだった。  


七月最後の日曜日も酷い暑さだった。

その日ももちろんたみちゃんは朝ごはんを食べにやって来た。

たみちゃんの朝ごはんが済んだ後、窓を開けっ放しにして自分たちの朝食を

摂っていると、家の前の道路で携帯電話で話す、見知らぬ男の人の声が

そのまま全部聞こえてきた。

「荷物を入れようにもまだ家が空いてないからさー」

と話す大声にぎょっとする。Bさん宅の引越しは今日なのだ!

食事中にも関わらずサンダルつっかけて外に出る。

百日紅の枝の下で涼んでいるたみちゃんを抱きかかえ、Bさん宅にひと走りする。

Bさん宅には既にトラックが横付けされていて、これから荷物を運び出そうという

ところ。

「たみちゃん、引越しなんだよ」

突然のこの状況に少なからずショックを受け、呆然としながら猫に伝える。

B夫人の姿は見えなかったがB嬢が門の外に出て来て、

「たみ子がお世話になりましたねえ」

と、別れの挨拶を始めた。

たみちゃんは道路の端でごろんごろんと寝転んでしまって、背中を埃まみれにし

ながら私たちの会話を聞いている。引越しの意味がまだ良く解らなくて、ただ何と

なくはしゃぎ廻っている幼稚園児のようだ。

引越し先は隣町のS市、たくさんの猫たち総動員の引越し、と聞いた。

話が終わるとB嬢は、

「ほらほらっ、たみ子も一緒に行くんだからねっ」

と、のんびり遊んでいる猫に強く呼びかけた。


一旦家に戻り食事の後片付けをし、洗濯機を回していつもの日曜日を始めた。

洗面所の掃除をしている時、夫に呼ばれて和室に行くと、外から眺めている

たみちゃんが居た。改めて挨拶に来た風情の猫と私たちはしばらくの間、網戸

越しに向かい合っていた。

こういう時、猫は全てを理解しているように感じる。

私たち人間は猫の言葉を正確に理解できないが、猫の方では人間の喋る言葉な

んて全部解りきっているに違いない。森羅万象を受け止める力の波長というもの

があるならば、猫の波長の方が人間のそれよりもずっとずっと長いに違いない…


洗濯物を干し、掃除機のスイッチを入れていつもの日曜日を続行した。

ひょっと見ると勝手口外の日陰で昼寝をしているたみちゃんが居た。

午後二時過ぎにその姿を認めた後、彼女は二度とやって来なかった。


隣町にどうやって猫を移動させたのだろう? 

車に乗せて行ったのだろうか? 

たみちゃんはたらのように車を厭がって鳴きはしなかっただろうか? 

新しい家に着いて、他の猫たちと仲良くやっていけるのだろうか? 

明日の朝になったら「斉藤さんちに朝ごはん食べに行かなくっちゃ」と思わないだ

ろうか? 

その日ずっとそんなことを考え続けた。

そして次の日の朝、やはりいくら待っても鈴の音は聞こえてこなかった……
                                                                                                                                            


                     <怒涛のクライマックス! 第29話につづく>                                                                                                                                                                                   

tarapapa に乗っかって遊ぶ’たみちゃん’
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たみちゃん、元気でやってるかな~? 
taramama の心の中で ’たみちゃん’ は永遠に不滅ですっ☆


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