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2008.01.28

猫撫で草紙 その1

taramamaです。

「猫マニアッ句」4周年記念特別企画として、「猫撫で草紙」を期間限定で
お届けします。
プロフィールページにも登場してますが、2000年春に出会った猫、「たみちゃん」
との1年間を綴った「おはなしのような」エッセイです。
記事の性質上、レスは書けませんが、コメントにてご感想お寄せいただければ
嬉しいっす。
回答の必要なご質問などはメールにて受け付けますのでこちらへどうぞ。
「猫マニアッ句」は「猫撫で草紙」終了後、復活の予定です。
ご了承よろしくお願いしま~す。

それでは・はじまりはじまり~~~


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<猫撫で草紙 その1>


その猫とは顔見知りだった。

朝、洗濯物を干すためにベランダに出ると、南側の軒上、既に陣取った彼女は朝

日を浴びながら毛繕いに夢中になっていた。エアコン室外機の向こう側にその姿

を認めた時は、こちらも猫のように物音を立てずに動いた。ちょっとした物音にも

反応してそそくさと去って行ってしまうこともあったが、そのうちに慣れてきたの

か、少しぐらい大きな音が出てしまっても気にすることなく、柔らかい春の朝日を

存分に堪能していた。二年前、自宅前の道路で隣の男の子とボール遊びをして

いた時に初めて会った猫だ。その時はまだ中猫程度の身体つきで、仲間たちと

一緒に道路に寝そべっていたのを思わず抱き上げたものだから、思いっきり噛み

付かれてしまった。Y君は当時幼稚園の年長さんで、彼に「かわいい猫ちゃんが

いるよ!」と、知らせたかったが為に。


その夏はふと思い立って金魚を飼うつもりになり、金魚鉢をひとまず買ってみた。

花びらのように口が開いたガラスの鉢を眺め、今度の祝日にはどこかで金魚掬

いをして来ようと思いついたある日の午後、リビングで『食べる煮干』という袋菓

子を食べながらテレビを観ていると、その猫が窓辺にやって来て『お座り』した。

庭に面した窓辺のレースは少し丈が短く、猫が部屋を覗くには十分のスペース

があるものだから、ソファーに腰掛けた私をしっかりと見据えてにゃあにゃあ鳴き

出したのだ。煮干の匂いを嗅ぎ付けたのだろう。「少し分けてあげようかな」と

思ったが、これを機にいつもねだられるようになったら面倒だと思い直し、

そのまま鳴き声を聞いていた。直ぐにあきらめると思っていたが予想に反して

大分粘られた。こちらも負けずに粘った。食べ終えてからも鳴いた。二十分ぐら

いは鳴いていた。薄いグレイに濃いグレイの混じったまだらの柄、背中に一筋

薄茶色のラインが走っていて、綺麗な声で鳴く成猫。


七月二十日海の日、夫と買い物に出かけ、スーパーの屋上で金魚掬いをする。

六匹ゲットしたが、持ち帰りが出来るのは二匹まで。コメットという品種のその

二匹だけでは何となくもの足りないので、水槽の中の琉金も一匹買い求める。

金魚を飼うのは何年ぶりなのだろう?いそいそと餌遣りや水替えに励んでいた

ら励みすぎたのが災いしたのか、十日も経たないうちに掬った二匹は終わって

しまった。暑さで蒸されたリビング中央に鎮座ましますひらひら付きの鉢の中、

生き残った琉金が一匹悠々と泳ぎ続ける。


例の猫は相変わらずうろうろしている。鈴のついた首輪をしているから、どこかの

家の飼い猫なのだろう。夫と二人暮しのこの家は、越して来るまで数年間空き家

であったためか、初めて訪れた時は猫たちの溜まり場になっていた。溜まり場と

いうか、屋根に一匹、軒上に一匹、庭の隅に一匹、そして塀の上や門扉や植え

込みの影からいくつもの視線を受けながら『物件下見』をした。越して来てからは

『猫の嫌がる粉末』を買い求めて庭じゅうに撒いた。それが効いたか効かなかっ

たかは判らないが、猫による『被害』も無かったので、忌避剤を撒いたことはすっ

かり忘れていた。白くて大柄な老猫だけは、私たちの入居にも忌避剤にも構わず

堂々と庭先で寛いでいたようだが、下見をした時のように何匹もたむろすることは

徐々に無くなっていったのだ。


鈴をつけた猫は、鈴を鳴らして家の周りで遊ぶようになった。白い老猫は、とっく

に姿を見せなくなっていた。夫に猫の話をする時、いつのまにか猫の名前は

『すず』になっていた。『すず』がうろうろすると見知らぬ猫が次から次へと現れる

ようになる。首輪をつけた飼い猫さんや、目の下鼻の横に傷跡がある、いかにも

野良君といった風貌の輩たちも出現する。寸足らずのレースの隙間から彼らや

彼女らが一列縦隊でのしのし歩くのを眺めたり、塀の上で堂々と香箱を作って

いるのに気がついたりすると、引越しして来た当初を思い出した。その寸足らず

のカーテンの隙間に『すず』がやって来ると、彼女はまず『お座り』をしてお行儀

よく畏まってから、

「にゃおわ~ん」

と挨拶する。メゾソプラノの良く響く声で。

猫がこんなにも美しい声で鳴くということをその時初めて知った。その美しい声を

聞いたからか雌猫だと信じて疑わず、

「にゃおわ~~~ん?」

と、たっぷりの抑揚をつけて語尾が上がる鳴き声を出す時はいかにも、

「お・く・さ・ま、おひまでしたらわたくしとおちゃでもしませんこと?」

なんて言われているような気がした。


つづく

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Comments

猫撫で草子、たみちゃんとは「野菊の墓」を連想しますが、思わぬ展開を期待してわくわくします。たみちゃんはたらちゃんの先代になるわけでしょうか。

ブログランキング引っ越ししたんですね。
確かに「猫っかわいがり」とか猫自慢というのとは違いますから。
メジャーデビューも俳句誌だったしな~。

うちの母猫もすごく透明感のある声で鳴きました。(息子・娘は普通の声です)
獣医さんにも、きれいな声でドスをきかせて威嚇するコだと言われていました(汗)。
音楽家のtaramamaが誉める声の持ち主、たみちゃん。「猫撫で草紙」展開を楽しみにしています。

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