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2008.03.24

猫撫で草紙 その17

<その17>

子供の頃からずっと、夏よりも冬の季節が好きだった。

冬の星座は、自分もまた宇宙人なのだということを教えてくれるように満天に

煌き、ストーブの炎は郷愁を誘うが如くカタルシスを興すが如くロマンチックで

あり、雪が降れば、一面の銀世界の輝きに何故か心が浮き立つ。

また、澄み切った空気の中では頭の中も身体の末端までもしゃきしゃきっと

冴えわたり、この上なく気分爽快だ。

夏はと言えば、外界と自分自身の境界線がおぼろ気になり、思考はアメー

バー状にだらしなく頼りなく、何よりも汗をかくのがうんざりだった。

ところが、その冬の寒さは身に染みた。引越しして来てから七年目、マンショ

ンよりも一軒家の方が寒いと痛感した。


その年二回目の雪が降り、しんしんしんと降る雪の中を、猫はしゃんしゃん

しゃんしゃんと鈴を鳴らしてやって来て、例の如く家の中に無性に入りたがっ

た。

昨秋一泊してから、半日や全日をリビングで過ごして行くことも何度かあった

が、問題がひとつあった。「トイレ」だ。

たみちゃんは完全に外猫化していて、食事は『実家』と我が家で済ませてい

るようだが、どうやらトイレは相変わらず隣家の敷地内を使用している様子。

もよおしてくると外に出たがり、その四キロ弱の身体の側面を襖にどすんどす

んと押し当てて、

「外に出してくださーい」

と、隣室で寝ている私たちを起こす。できる限りは猫の要求を聞いてあげたい

が、寒さや睡眠不足のせいで身体がついていかなくなった。湯たんぽを使っ

てみたり、朝食後に『足湯』を試したり、散歩に出る時は携帯用カイロを背中

や腰にべたべた貼りつけて、『冷え性』になってしまったかもしれない体質を

改善するべく、あらゆる工夫を試みる。

以前より風邪を引きやすくなり、ハンドクリームをどれだけ塗っても水仕事に

よる手荒れは改善せず、これだったら夏の暑さの方がどれほどマシだろうと

思い始めた。

寒い夜にわざわざベランダに出て、星を眺めようという気はさらさら起こらず、

石油ストーブの給油は面倒で、雪が積もった後の雪掻きの事を考えると冬の

季節の厳しさや家事の多さに閉口する。それに、冬至を過ぎたばかりの短日

の日々は始終何かに追われているようで、息つく暇もなくクリスマスやら大掃

除やら年賀状書きやら年始の支度やらの年中行事にふり廻されてしまう…


その二回目の雪の日、たみちゃんも、激しく降る雪に怯えるように、必死に

なって暖を求めてやって来た。

その存在をアピールするが如く、軒から軒へ「どすどすどすっ」と、わざと大

きな音を立てて移動し、

「雪だよ、雪~~~! おばちゃ~ん、雪が降ってきたんだよ~~!」

とでも言うように、

「にゃお~~~~にゃおにゃお~にゃお~~~お~」

と煩わしい抑揚をつけて執拗に呼び続ける。

その雪の日には結局風邪をこじらせてしまい、熱も出てしんどかったので、

Bさん宅に強制送還させるべく猫を抱きかかえて連れて行った。が、何回呼び

鈴を押しても留守なのだろうか応答が無い。仕方がないのでそのまま連れて

帰り、猫のためのダンボールハウスを作る。底に新聞紙を拡げ、その上に古い

毛布を何重にも折って猫の身体をすっぽり包むように敷きつめ、折り込んだ毛

布の間に湯たんぽを入れて、その箱を勝手口外の棚の中に据えた。とりあえ

ず猫はその中に入ってくれた。そして何とか風邪を治そうと、薬を飲んでその

後すぐに寝込んだ。次の日の朝、雪はやんでいたが、降り積もった雪の上に

たくさんの猫の足跡を発見した。多分、野良猫たちが『より安全で少しでも寒く

ない場所』を探して右往左往したに違いない。しかし、たみちゃんだけの足跡

とも考えられるのだ。しかし、その足跡は『実家』の方には続いていなかった。

こんなに寒いのにどうして『実家』に帰らないのだろう、、、


その一週間後にも雪が降った。その日は夫の勤めが休みで、私の風邪もすっ

かり治っていたから、猫を招き入れて、一緒に『雪見の休日』を過ごしたのだっ

た。炬燵に入って窓の外の降りしきる雪を眺めながら、餅を焼いたり干し柿を

食べたりした。足の裏を拭われ身体をタオルで拭かれた猫は、最初のうちこそ

炬燵の回りをうろうろしていていたが、鼻で炬燵布団をめくり上げ、匂いを嗅

ぎ、おそるおそる潜ってお尻を出したまま炬燵の中を検証し、そしていざ中に

入ってしまえばヒーターの真下に仰向けに寝っ転び、右に左に身体をよじって

大いに喜んだ。

その両眼を三日月状に細めて、いつまでも嬉しそうに微笑んでいた。

かわるがわる炬燵布団をめくってその様子を見た私たちは、「猫も笑うんだなあ」

と、その時何度も確認しあった。                                                                                                                                                                                                                                                                   
11
<ソファの上でもご機嫌なたみちゃん。笑ってるでしょ?>


つづく


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Comments

外猫をうちに入れる時に一番の心配はトイレですよね。

たみちゃんはどうしたのか…。
これからの展開がますます興味しんしん。

こたつの中?のたみちゃん、幸せそうですね~。

毎日ポチッとはしてます。
コメントはついさぼり気味、ちゃんと読んでます(笑)

ポチッとはしてますが、コメントはさぼり気味です。

うちのコもお泊まりになったときの一番の心配はトイレでした。

さて、これからどうなるのかますます目が離せませんね。

あれれ~。
すみません。
コメント送信途中でエラーが起きたのでもう一度書いたら、
同じようなコメントが二つも行ってしまいましたthink

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