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2008.04.14

猫撫で草紙 その22

「猫マニアッ句」にご訪問いただきありがとうございます。

ただいま4周年記念特別企画(!)エッセイ「猫撫で草紙」連載中。

猫写真と猫俳句による「猫マニアッ句」は5月頃再開の予定です。

010506
たみちゃんとたらの2ショット!(2001年5月6日撮影)
たみちゃんチトぶ~たれてるかな?


<猫撫で草紙 その22>


白黒猫の名前はわりとすぐに付けられた。たみちゃんの『た』をもらって『たら』と

決めた。

次の日の朝、いつも通りにやって来たたみちゃんと一緒に『たら』もリビングに上

がる。雨がまた降り始めたのだ。

たらは朝までずっと家の回りにいたのかもしれない。

たみちゃんが鈴を鳴らしてやって来れば、寸足らずカーテンの窓が開くのを知って

いたのかもしれない。

雄でも雌でもどちらにもいいように名付けてみたのだが、『たら』は雌であった。

雌同士だからなのか二匹とも相性は悪くなさそうで、その日は早速彼女たちに

留守番を任せて買い物に出かけた。


たらは帰宅後もずっと居座り、外に出て行こうともしないので、猫トイレを作って

一泊させる。

次の日、抱きかかえてBさん宅に行き、B夫人に猫を見せて尋ねると、

「ああ、この子、ウチの猫ですよ」

と言う。

猫が来てからの経緯をかいつまんで話し出すと『ウチの猫』はBさん宅に入る

でもなく、それどころか何かの危険を悟ったように腕の中から一目散に逃げ出

してしまった。まあとにかく飼い主がBさんだということが判って良かったが、

挙動不審だなあとも思う。

そのまま外で遊んでいたらしい彼女は夕方にはちゃんと戻って来て、そして当然

のように上がりこむ。そして当然のように一夜を明かして、朝いつも通りにやって

来たたみちゃんを網戸越しに迎えた。

網戸越しにたらを認めたたみちゃんの表情は、人間の目にも複雑なものだった。

その日の昼に新聞の集金お兄さんが来た折、玄関近くに居座っていたらしいたみ

ちゃんは、玄関ドアが開くとすかさず家に上がり込んで、

「にゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあにゃあ」

と、矢継ぎ早におしゃべりして甘えた。次の日の朝には、花壇にしゃがんで用を

足そうとするたらの後頭部をすかさず猫パンチして、それを制した。

たみちゃんの方も自分の存在をアピールするのに必死で、縄張りを主張するため

にも新入りにみっちりルールや仁義を教えている。

その花壇にもう一匹、新入りに挨拶がてらシューシュー言いながら寄って来た

ミッチーは、逆にたらの強力な一撃ですごすご退散した。たらの身体の二倍はあ

る雄のミッチーも、この時ばかりは何故か完敗したのだ。三日間泊まり続けて

「わたしは何としてでもこの家の子になるんだ」と決意したかのような、そしてそん

な強い気持ちが炸裂したかのような見事なアッパーカット。


そんなこんなで、とうとう二匹で仲良くソファーに並んで寝るようになり、朝ごはん

を済ませてから二匹を外に出すと、たらはやはり何処にも行かず、ベランダや庭先

でじっと次に中に入るタイミングを窺っていた。夕方になると「メエメエメエ」と

羊のように鳴いて、夕飯を催促する。

ある日の風の強い昼下がり、レースのカーテンの隙間からサッシ越しにベランダを

窺うと、植木鉢用の棚を風除けにして小さく箱座りした彼女は、何度も何度も胸や

前足をぺろぺろ舐めて自分を励ましながら何かをじっと待っていた。その佇まいは

あたかも「この家に置いてもらいます」という意思表示であり、「こんなにアピール

しているのにどうして解ってくれないの?」という抗議でもあり、「この家に置いて

くれますように」と願う彼女の祈りでもあった。

この時、この猫はもう絶対Bさん宅には帰らないだろうと確信した。

そしてその夜から、たらを『外には出さない』ことにする。


一日中リビングで生活するようになった猫は、今まではたみちゃんが寛いでいた

ソファーに堂々と陣取り、朝ごはんと夕ごはんをキッチンで食べ、トイレも室内で

済ませる。トイレの使い方をちゃんと知っているのは野良ではない証拠なのか。

金魚を飼い始めた当初、自分以外にも『動くもの』が家の中に居る事実にまさに

心が躍る喜びだったが、ピアノの練習を終えて二階から一階のリビングに降りて

来ると、そこに私を待っている猫が居ることは金魚の時の喜びの比ではなかった。

階段を下りて来る足音を聞きつけて、猫はいつでもドアの向こう側で「メエメエ」

言いながら待っている。ひとりにされたことが淋しいのか、抱いてもらうまで足元

に何度もすり寄る。ソファーで寝ていても、寝ぼけ眼のまま「アーアー」と鳴いて

挨拶する。お腹を見せて両手を上げて横向きに寝転んだ猫の頭から尻尾まで、

その気高き毛皮を右手で撫でさせてもらうと、猫は喉をゴロゴロ言わせて喜び、

撫でてもらったお返しと言わんばかりに顔の前に置いた左手の甲を、自分の毛繕

いをするような丁寧さで何べんも何べんも舐めてくれる。それは予想以上に力の

強い、ざらざらした、熱い感触だ。たみちゃんが家の中で私を待っていることは無

かったので、この儀式は新鮮だった。


布張りのソファーは爪研ぎでぼろぼろにされ、リビングのあちこちが毛だらけにな

り、掃除にかける時間が以前の倍に増えてしまったが、いつの間にかそんなこと

は苦にならず、こまめにせっせと掃除する習慣さえついてきた。


猫たちに鍛えられたのか。


<つづく>


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Comments

たしかに…。

ねぐらと食事を確保するためには猫は必死ですよね。

うちのコもそうでしたね~。

ご近所のAさん宅の家出猫で、他のコと折り合い悪くて飛び出したらしい。

うちのコになった後、Aさんから「よかった」とお礼言われました。

たらちゃんもより居心地のよい場所を探していたんでしょうね。

>はづきさん、 

猫のおかげでご近所さんと親しくなることもありますね~

「たら」は一体どこからやってきたのか?

未だに謎ですが、それはそれでいろいろ想像してしまう。。。

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